源氏物語名場面㊲
藤壺宮 参
『源氏物語』の写本
藤原定家による「青表紙本」
The British Library
大英図書館
◇
青表紙
源氏物語諸本のうち、
藤原定家が書写所持していた本。
また、その系統に属する諸本。
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しかし困ったことに
源氏は藤壺への想いを諦めていない。
今なお執拗に迫ってくる。
だからといって
素っ気なくして臍を曲げられたら困る。
東宮の後見人を
辞められたら取り返しがつかない。
桐壺院亡き今、
頼りになるのは源氏だけである。
■
ある夜更けに
源氏が藤壺の寝所に忍び込んできた。
毎日欠かさず
戸締りを厳重にしているが、
気が付いた女房は一人もいなかった。
源氏は
言葉を尽くして思いの丈を訴える。
聞くともなく聞いていると
藤壺は
気分が悪くなり胸が苦しくなった。
女房たちが駆けつけ介抱しているうちに
藤壺の容態が落ち着いてきたので
彼女らは戻って行った。
すると
暗がりに身を隠していた
源氏が出てきて藤壺を引き寄せる。
藤壺が上の衣装を
脱ぎ捨てて逃げようとすると
髪の毛を掴んで引き止めようとする。
それでも
藤壺は気力を奮って源氏を振り切った。