源氏物語名場面㉞
紫の上 肆
女三宮
女三宮と猫
鈴木春信画
浮世絵師の手になるからか
平安時代の皇女というより江戸期の
町娘のような佇まいと雰囲気
◇
女三宮/朱雀帝の第三皇女
源氏に降嫁した時は
幼くて頼りないが品が良く美しかった
🔲
源氏が不惑を迎える絶頂期のころ。
近く
出家する心づもりの朱雀院は
うら若い女三宮の行く末が心配だった。
幼い頃に母親を亡くしており
頼り甲斐のある後見人も見当たらない。
朱雀院は考えあぐねた末
〈准太上天皇〉になったばかりの
異腹の弟源氏への降嫁を思いついた。
■
年が改まった二月半ば
女三宮は【六条院】に輿入れした。
紫の上は
源氏が女三宮を正妻として
迎えたことで心中穏やかではない。
幼い頃から
父のような兄のような源氏に育てられ
溢れるような愛情を受けてきた
紫の上にとって
女三宮の輿入れは屈辱的であった。
■
新婚三日間は
盛大かつ華やかな宴が催されたが
一見したところ
紫の上は宴の世話に余念がなかった。
新郎は三日三晩、
新婦とともに過ごすのが習わしである。
紫の上は初めてのことに、
寂しくてしとど枕を濡らした。
■
人前では健気に振る舞っているが
何日も物思いに沈む状態が続き
ついに病に臥せてしまった。
心を病んだ紫の上は出家したい
と申し出るが源氏は頑として許さない。
明朗快活な紫の上はもういない。
紫の上
○目に近く うつればかわる 世の中を
行く末遠く 頼みけるかな
目の前のことでも
時が経てば変わる夫婦仲を
行く末長くと頼りにしておりました
○身に近く *あきや来ぬらん 見るままに
青葉の山も うつろいにけり
*秋が身近に来たのでしょうか、
(わたしも*飽きられる時が来たのかしら)
見ているうちに
青葉の山も紅葉に色変わりしてしまいました
次回は、藤壺の決意