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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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⑲朧月夜 陸

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源氏物語名場面

 

朧月夜 陸

 

 

 

        几帳         懐紙

 

 

いること

気付かれないようそっと

出た顔が火照っていて赤い。

 

右大臣の顔が赤いのは

病による発熱のせいだろうと思ったが、

 

「顔がずいぶん火照っているようだけど

どうかしたのですか、*六の君

 

*六の君/朧月夜は六女

 

目を落とすと娘の着物が、

男物の紫の帯を引きずっている。

 

「何か、おかしい―」

 

疑念をもった右大臣辺りに

目を凝らすと

几帳の下に和歌などを書き散らした

男物の懐紙が落ちている。

 

六の君

見たことのない懐紙だが―」

 

万事休す!

 

もはや言い逃れできない。

 

といって、

本当のことは口が裂けても言えない。

 

朧月夜はしばし呆然としていた。

 

激昂した右大臣懐紙拾い

上げると御帳台の中を覗き込んだ。

 

漆へ

 

 

 


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