源氏物語
39帖夕霧
源氏50 紫の上42 落葉の宮(女二の宮)26
夕霧29 雲井の雁31 秋好中宮41 一条御息所
朱雀院53 致仕大臣(頭中将)52
夕霧
山里のあはれを添ふる夕霧に
たち出でん空もなき心地して 夕霧
(訳は本文に)
39帖『夕霧』の帖名と人名の由来
◆
霧の中を歩めば覚えざるに衣湿る 道元禅師
だれしも
身を置く環境によって我知らず影響を受けるものだ
*不断経を読む僧の交替の時刻になったので担当の者が合図の鐘を打ち鳴らすと、座を立つ僧と引き継ぐ僧の声が一つになって崇高に聞こえてきた。
不断経
①毎日、絶え間なく経を読むこと。
②死者の冥福追善などのために一定期間、
昼夜間断なく大般若経や法華経などを読み上げること。
うら寂しい山荘という場所柄、夕霧は目や耳にする全てのことが心に沁みて立ち去る気にならなかった。
一条御息所がひどく苦しんでいると聞いて女房たちがそちらに出払ったので、落葉の宮の周りに誰もいなくなった。
「落葉の宮に恋心を伝える絶好の機会だ」と夕霧が思っているところに、山荘の軒下まで深い霧がひたひたと流れてきた。
夕霧、落葉の宮に、
「都への道が、深い霧で見えなくなって参りました」
そして、
○ 山里の あはれを添ふる 夕霧に
立ち出でん空も なき心地して
山里の物寂しい思いを募らせる夕霧のせいで
帰る方角が分からなくなってしまいました
〈暗に、帰りたくないと〉
落葉の宮、
○ 山がつの 籬をこめて 立つ霧も
心空なる 人はとどめず
わびしい山荘の垣根に立ちこめている夕霧も、
心の浮わついた方をお引き止めは致しません
〈お帰りください〉
しかし御簾の向こうから仄かに聞こえてきた落葉の宮の声や気配に魅かれて、夕霧はすっかり帰る気がしなくなった。
名作映画案内91
原題*My Darling Clementine
荒野の決闘
1946年公開
監督*ジョン・フォード
主演*ヘンリー・フォンダ/ワイアット・アープ
リンダ・ダーネル/チワワ
ヴィクター・マチュア/ドク・ホリデイ
★
西部開拓史で有名なアープ兄弟とクラントン一家の
《OK牧場》での対決が題材。
メキシコからカリフォルニアへ牛を運ぶ途中
アープ兄弟はアリゾナのトゥームストンに立ち寄ったが
留守を任せていた末弟が何者かに殺され、牛が盗まれた。
クラントン一家が犯人であると踏んだ
ワイアットは保安官となってトゥームストンに留まる。
賭博師ドク・ホリデイと知り合って仲良くなるが
ドクを追ってやって来たクレメンタインに一目惚れする。
ほどなく、ドクの愛人チワワが
殺された末弟のペンダントを持っていることが発覚。
チワワはクラントンの息子に貰ったという。
97分
邦題『荒野の決闘』から連想する
活劇というより詩情豊かな古典的映画。
スクリーンから流れてくる
「愛しのクレメンタイン」が美しく切ない。