九条兼実(藤原基房の異母弟)
7月3日、摂政・藤原基房は、岡崎にあった法勝寺の法華八講に参るところであった。
基房の行列は、女車(宮中の女房などが乗る牛車)に乗った平資盛と鉢合わせした。
なにか、資盛に無礼があったのだろうか。
基房の舎人(とねり:護衛役の下級官吏)や居飼(いかい:牛馬の世話役)らが、資盛の車を襲って乱暴狼藉におよんだ。
だが、恥辱を与えた相手が重盛の次男の資盛と知ったとき、基房は震え上がった。
基房は屋敷に帰るとすぐに謝罪の使者を遣わして、舎人や居飼らを引き渡すべく申しでるが、激怒した重盛はそれを拒否。
報復を恐れた基房は、騒ぎをおこした従者たちに暇を与え、首謀者の身柄を検非違使に引き渡すなど、誠意を見せて重盛の怒りを解こうとした。
だが、怒りの収まらない重盛は侍を集めて報復の準備をする。
これを知った基房は、恐怖のあまり屋敷に引きこもって、参内(さんだい:宮中に参上すること)すらしなくなった。
3か月も外出を控えていたが、摂政として、朝廷の儀式を欠席するわけにはいかない。
10月21日、高倉天皇元服の儀式の打ち合わせために参内するところであった。
基房の一行を、何者かが襲撃する。
前駈5人が馬から引きずり落とされ、4人が髻(もとどり:頭髪を束ねたもの)を切られた。
基房は参内を中止せざるを得ず、高倉の元服の儀式は延期になった。
以上、『玉葉』から …… ……
『平家物語』とは話の筋立ても、重盛の性格もずいぶん違う。
文脈から「黒幕は重盛」ということが分かるが、兼実は、基房一行を襲った連中が重盛の手の者とは書いていない。
異母兄の基房同様、やはり重盛が怖かったのだろうか。
ちなみに、兼実は源頼朝とは良好な関係にあるが、平家一門とは疎遠だった。
兼実の同母弟である天台座主・慈円が、『愚管抄』の中で、「小松内府(重盛)は不可思議の事を一つしたり」と、重盛が襲撃させたと指摘している。
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平家物語の群像 平重盛④玉葉と愚管抄
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