源氏物語
35帖若菜下
源氏41~47 紫の上33~39 女三宮15~21 夕霧20~26
明石の君32~38 柏木:25~31 明石女御13~19 冷泉帝23~29
五戒
源氏、
思えば、六条御息所の「死霊」はだれも近くにいなかったはずの私と紫の上の睦言さえ聞いていたのである」
源氏はもはや秋好中宮のお世話をすることも嫌になった。
紫の上はかねてより落飾したいと切望している。
今まで決して《出家》を許そうとしなかった源氏は、
「《受戒の功徳》によって病気が快方に向かうかも知れない」
と期待して、頭頂に形式的に挟みを入れる《五戒》を受けさせた。
仏前で戒師が読み上げる願文の中に、《持戒の功徳》のあらたかなことを説くありがたい言葉が何度かでてきた。
見ている方が恥ずかしくなるほど、源氏は紫の上の側にひたと寄り添って涙を拭いながら一心に祈っている。
都でもっとも聡明な源氏をもってしても、愛する人の生死に関わる非常時にはやはり冷静ではいられないようだ。
どんな手立てを使ってでも紫の上を助けようと昼夜を問わず思いつめているからだろう、源氏の端正な顔立ちが少し面窶れている。
五月(旧暦)の梅雨期は、雨が降らなくても鬱陶しい曇天が続く。
いたって元気な人でも快活な気分にはなりにくい時節だが、紫の上の容体は以前よりはやや落ち着いている。
名作映画案内⑱
太陽がいっぱい
1960年公開
原作*パトリシア・ハイスミス
監督*ルネ・クレマン
音楽*ニーノ・ロータ
主演*アラン・ドロン(トム・リプリー)
マリー・ラフォレ(マルジュ・デュバル)
モーリス・ロネ(フィリップ・グリンリーフ)
★
アラン・ドロンが
世界のスターダムにのし上がった記念碑的な作品。
アメリカの貧しい青年トムが
富豪の放蕩息子フィリップの父親に
頼まれ彼を連れ戻すためイタリアにやって来た。
ナポリで
金に物をいわせて酒色に溺れている傲慢なフィリップに
怒りと嫉妬を覚えたトムは彼を殺して彼に成りすまそうと--、
118分