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平家物語の群像 二位尼⑨伊豆の流人、前兵衛佐頼朝

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$吉備路残照△古代ロマン-源頼朝
 伝源頼朝坐像 鎌倉鶴岡八幡宮に伝来 東京国立博物館所蔵

入道相国、さしも日頃はゆゆしげにおはせしかども、誠に苦しげにて、息の下にのたまひけるは、「われ、保元・平治よりこのかた、度々の朝敵を平らげ、勧賞(けんじやう)身に余り、かたじけなくも帝祖・太政大臣に至り、栄華子孫に及ぶ。

日ごろは豪気な清盛が息も絶え絶えに、「私は保元・平治の乱以来、たびたび朝敵を平らげ恩賞は身に余るほど。
畏れ多くも安徳天皇の外祖父となり、太政大臣に上った。栄華は子孫にも及んでいる。

○今生の望み一事も残るところなし。

この世に何一つ、思い残すことはない。

○ただし思ひ置くこととては、伊豆の流人、前兵衛佐(さきのひやうゑのすけ)頼朝が首を見ざりつるこそ安からね。

ただ、伊豆に流した源頼朝の首を見なかったのが心残りだ。


○われいかにもなりなんのちは、堂塔をも建て、孝養をもすべからず。

死後、仏塔を建てなくていい、仏事供養の必要もない。


○やがて討手を遣はし、頼朝が首をはねて、わが墓の前に掛くべし。

すぐに打手を送って、頼朝の首をはね私の墓前に供えよ。


○それぞ孝養にてあらんずる」とのたまひけるこそ罪深けれ。

それこそが供養だ」と仰ったのは、誠に罪深いことであった。


  ……(一語一語を忠実に訳してはいません)……


以上、清盛が長年連れ添った妻・時子に語った遺言である。

フィクションであろう。

清盛最後の望みは、頼朝の首をとって自分の墓前に供えよというものだ。

鎌倉時代に書かれた平家物語の作者は、頼朝が平家を倒して幕府を樹立したことを知っているが、清盛は知らない。

清盛が亡くなったのはまだまだ平家全盛のころ。

死ぬ間際に、伊豆に流した源氏の若造が「墓前に供えよ」というほど気にかかっていたということはあるまい。


仏塔を建てるな仏事供養をする必要もない、とも言い残した。

これは、南都焼き討ち事件と呼応する。

清盛には最後まで仏心がなかった、と言いたいのだろう。

だから、諸行無常の響きとともに平家は滅び去った、と。

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