源氏物語
第33帖藤裏葉
光源氏39 紫の上:31 東宮(春宮) 明石の君:30
明石の姫君11 夕霧18 雲居の雁20 内大臣42
風俗博物館
京都市
柏木たちが夕霧の身に何かあったのではないかと本気で心配し始めた時分にやっと現れた。
内大臣の子息たちはいずれ劣らぬ美男子揃いだが、それでも夕霧の美男ぶりは際立っている。
心根はやさしく身のこなしは優美、犯しがたい気品がある。
内大臣は初めて招待する甥のために、客間の飾り物や調度品などをピカピカに磨かせるなど心を尽くした。
その客間に夕霧がいるのを見かけると、内大臣は冠などを身に付けて客間に入ろうとするとき北の方や女房らに、
「客間をのぞいて御覧なさい。
夕霧中将は、会うたびに立派におなりです。
立ち居振る舞いも沈着で、堂々としたもの。
むかしの源氏の君よりも勝っておられる。
源氏の君は眉目秀麗の上に仕草が優美で物腰が柔らかく愛嬌もあって、顔を見るとつい微笑んでしまう。
ただ、政治家としては謹厳実直さに欠けるところがあった。
夕霧中将は学才に優れ、しかも美丈夫で申し分ないともっぱらの評判のようだ」
内大臣は北の方や女房らを相手に客人(雲井の雁の婿候補でもある)を唐突に褒めそやすと、ゆっくりと客間に入って夕霧と対面した。
被災地を選べば支援になります
内大臣は儀礼的で固苦しい挨拶はそこそこに、今を盛りのみごとな藤の花に話題を転じた。
「春に咲く花はなべて可憐で美しく私たちの目を楽しませてくれますが、いつものことながら慌ただしく散ってしまうのが心残りです。
春の花々が散り急ぐなか、この藤だけが少し遅れて咲き始めるのが妙に床しく思われます。
花の色も紫で、懐かしい由縁の色です」
かすかに微笑んでいる内大臣は、たおやかな源氏とは異質の風格があり艶やかな男っぷりである。
サイモン&ガーファンクル
冬の散歩道