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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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平家物語の群像 祇王⑦出家、奥嵯峨へ

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$吉備路残照△古代ロマン-祇王寺と奥嵯峨周辺 祇王寺と奥嵯峨周辺

またしても清盛に辱めを受けた祇王は、刀自の顔を見ると、こらえていた悲しみがいっぺんにこみ上げてきた。

「母上の言いつけに背くまいと、お屋敷に出かけました」

だが、もう耐えられない。

「この世にある限り、どれだけつらい目に遭わされるか分かりません」

祇王は、刀自に身を投げる決意を明かした。


「わたしも、お姉様にお供します」

そばで聴いていた妹の祇女も、死ぬという。


刀自は、ふたりの娘に先立たれては生きていけない。

「清盛公のお屋敷で、それほどつらい目に遭おうとは思わなかった。許しておくれ。お前たちが逝って、年老いた私だけが生き残っても仕方がない」

娘たちと一緒に死のうと思ったが、み仏の戒めが頭をよぎる。

「私が死ねば五逆罪の一つ、母を殺す罪にあたる。この世は仮の世、どんな恥も忍ぼう」

しかし来世までも、お前たちふたりに罪を背負わせるわけにはいかない。


「確かに親殺しは五逆罪の一つ。死ぬことはあきらめます。どこか遠い所に行きましょう」

死ぬことを思いとどまった祇王は、俗世を捨てることを決意。

時に、祇王21。

髪をおろして尼になり、嵯峨野の山里にかくれ、庵を結んた。

19歳の祇女も、つづいて出家。

45になる刀自もまた、髪を剃って仏門にはいった。


しかし念仏生活に入ったからといって、祇王の心のいた手がすぐに癒されるわけではなかった。

念仏を一心に唱えようとしても、清盛の心ない仕打ちを思い出しては、気持ちが波立つ。

仏御前の顔が浮かんでは、心が乱れる。

悲しい運命に気持ちは沈みがちで、涙々の明け暮れである。

悟りの境地は、はるかに遠い。

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