第二十八帖 野分
光源氏36 紫の上28 蛍兵部卿宮 玉鬘24 内大臣39
秋好中宮27 夕霧15 明石の君:27 柏木20
明石の姫君8 髭黒右大将 花散里22
雲井の雁 弁少将 近江の君
小袿こうちぎ
平安時代以降に用いられた高位の宮廷女性の準正装。
直衣に着替えた源氏が〈御簾〉を上げて外に出て来たとき、夕霧はぼんやりと物思いに耽っていて源氏に気がつかない様子。
そんな夕霧をみて、源氏はまた御簾の中に戻っていった。
紫の上に、
「やはり、夕霧はきのうあなたを見かけたようです。
あのとき、〈妻戸〉が開いていましたからね」
紫の上は顔を赤らめて、
「どうして、そのようなことがございましょうか。
渡り廊下の方では、足音さえしませんでしたもの」
「でも、やっぱり変だ--」
源氏はそうつぷやきながら、秋好中宮の【秋の御殿】に向かった。
中宮に、例年になく激しい暴風の吹き荒れた野分のお見舞いを述べたあと、源氏はそのまま【冬の御殿】に明石の君を見舞った。
このところめっきり源氏の足が遠のいている明石の君は、ひとり寂しく箏の琴を爪弾いていた。
明石からはるばる嵯峨嵐山近くの「大堰の里』に移り住んだ当初は、紫の上の目をぬすんでたびたび会いに来てくれた。
あのころが懐かしい。
そんな感慨にふけっていると、前駆の声が源氏の来訪を告げた。
明石の君はやや草臥れた普段着の上に衣桁にかかっていた小袿を着て、源氏をむかえた。
しかし、源氏は野分のお見舞いを口にすると早々に帰っていった。
明石の君の寂しさと物足りなさは如何ばかりか。
○ おほかたに 荻の葉過ぐる 風の音も
憂き身ひとつに しむ心地して
ふつうに荻の葉のうえを通りすぎる風の音さえ
つらいわが身には深く身に染みるような気がします
【秋の御殿】の〈西の対〉では、夜通し吹き荒れた風の音が恐ろしくて夜明けまで眠れず、今やっと玉鬘は鏡をのぞいているところであった。
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