仏御前 井上安治画
祇王が清盛の寵愛を受けてから3年たったころ、舞いが際立って達者な白拍子が現れ、都中の人気をさらっていた。
加賀の出身で、名は仏、年は16。
「昔よりおほくの白拍子ありしが、かゝる舞ひはいまだ見ず」
舞いの名手として、評価もすこぶる高い。
仏はまだ16歳、ちやほやされて舞い上がるのも無理はない。
「都中に人気の高いわたしが、今をときめく清盛公に呼んでいただけないのは残念です。遊び女(め)の習い、遠慮することはありますまい。こちらから御屋敷に押しかけてみましょう」
こわいもの知らずの仏は、清盛の屋敷へ出かけて行った。
「いま評判の、仏という白拍子が来ております」
取次ぎが申し述べると、
清盛は、「何だ、遊び女はこちらが呼んでから来るものだ。呼ばれてもいないのに、自分の方から押しかけて来るとは何事だ。しかも白拍子なら、ここに祇王がいる。神だろうが仏だろうが、用はない。さっさと追い返せ」
仏がすごすごと帰ろうとしていると、祇王が清盛にとりなした。
「遊び女が自分から参上するのは、私たち白拍子の世界では普通のことです。しかも、仏は年端もいかないよう様子。せめて、目通りだけでも許してやって下さい」
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