祇王 北斎:戴斗改為一筆
平家物語は冒頭で、「諸行無常(万物は流転する)」と説き、「盛者は必ず衰える」と内外の権勢家たちの例を引いている。
そうした波乱にみちた権勢家たちの掉尾を、平清盛が飾る。
(原文)まぢかくは、六波羅の入道前(さき)の太政大臣、平の朝臣(あそん)淸盛公と申し人のありさま、伝へ承るこそ心も詞(ことば)も及ばれね。
(訳)最近では、六波羅におられた前太政大臣・平清盛公という方の生前の様子を伝え聞くと、(その暴虐非道ぶりは)想像することも、言葉で表現することも出来ないほどである。
清盛こそ、最悪の人物と言いたげだ。
清盛が史上まれにみる極悪人であることを裏付けるために、平家物語はふたつの象徴的なエピソードを挿入した。
そのひとつが、『祇王』である。
清盛が最高権力者として権勢をふるい、平家一門がこの世の春を謳歌していたころ、祇王・祇女(ぎおう・ぎじょ)という白拍子(舞姫)の姉妹が、都で大変な人気を博していた。
白拍子といえば、源義経の愛妾・静(しずか)御前が有名だろうか。
ある日、祇王と祇女は、彼女たちの芸の素晴らしさに感じ入った清盛の屋敷に迎えられた。
清盛は舞いを堪能しているうちに、いつしか祇王を寵愛するようになる。
彼女らの母・刀自(とじ)にも毎月、十分なお金や米を送っている上に、家も建ててやった。
母子三人は物質的にも恵まれ、幸せな日々を送っていた。
世の女性たちの中には、祇王にあやかろうと自分の名前に「祇」の文字を付ける者さえいた。
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平家物語の群像 祇王①清盛と祇王
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