俊寛僧都の墓
乞食はもとは法師のようだが、ボロボロの衣服を身にまとっている。
有王が俊寛のことを尋ねると、乞食は「私かその俊寛だよ」と言ったなり、バッタリと前のめりに倒れた。
気を失ったようだ。
有王は変わり果てた主人の姿に胸がつぶれそうだったが、俊寛は俊寛で有王が目の前にいることに驚いて心の均衡を失ったのだろう。
しばらくして意識を取り戻すと、俊寛は、鬼界ヶ島での様々な苦労を語りはじめた。
それから、棲家としている小屋へ有王を連れて行った。
かつて法勝寺の執行職として多くの従者を抱えていた人物の住まいとはとても思えない、廃屋同然のあばら屋である。
雨露を凌ぐことさえ容易でないだろう。
家族の消息をたずねる俊寛に、有王は若君と北の方はすでに亡くなったことを告げて、姫からの手紙を差し出した。
俊寛はすっかり生きる張り合いを失くして、娘の行く末を案じつつも食を断つ。
そして有王が島にきて23日目、念仏を唱えながら37年間の命を終えた。
有王は遺体を荼毘に付し、帰京して姫に報告した。
嘆き悲しんだ姫は12歳で尼になり、奈良の法華寺にはいって父母の後世を弔った。
○俊寛僧都の墓の所在地は、鹿児島県の喜界ヶ島のほか、佐賀市の法勝寺、長崎県の伊王島、山口県長門市の湯本温泉などいろいろある。
○流刑地である鬼界ヶ島の場所についても、鹿児島県大島郡の喜界島、鹿児島郡三島村の硫黄島、長崎市の伊王島など諸説あるようだ。
○ひそかに島を脱出したという説もあって、鹿児島県阿久根市や出水市、佐賀市などに俊寛に関する言い伝えが残っている。
俊寛にちなんだ文芸作品
世阿弥『俊寛』 近松門左衛門『平家女護島』
倉田百三『俊寛』 菊池寛『俊寛』
芥川龍之介『俊寛』 本條秀太郎『俚奏楽 俊寛』
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新・平家物語(一) (吉川英治歴史時代文庫)/吉川 英治
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大和の古寺〈5〉秋篠寺・法華寺・海龍王寺・不退寺/岡本 茂男
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平家物語の群像 鬼界ヶ島⑤俊寛、有王との再会そして死
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