二十六帖 常夏
光源氏36 紫の上28 蛍兵部卿宮 玉鬘24 内大臣39
秋好中宮27 夕霧15 明石の君:27 柏木20
明石の姫君8 髭黒右大将 花散里22
雲井の雁 弁少将
夕霧 柏木 内大臣
風俗博物館
源氏 夕霧 内大臣
内大臣の子息/柏木・弁少将
うだるように暑い夏の昼下がり、源氏は夕霧とともに東の*釣殿で涼んでいた。
たくさん控えている殿上人のうちの料理自慢が、桂川のアユや賀茂川の*石伏などの小魚を源氏の目の前で料理している。
そこへ、内大臣の子息たちが夕霧を訪ねてやって来たので、源氏は喜んで彼らに酒や氷水などを振る舞った。
「先ほどから退屈で、眠くなっておりました。
あなた方はちょうどいい時に来てくれました」
風はわずかに吹いているが、日が長くて雲ひとつなく太陽の輝く空が西日になるころ、けたたましい蝉の声が暑苦しく聞こえてきた。
*釣(り)殿 つりどの
寝殿造りで、池に面して東西に設けられた建物
*石伏 いしぶし 小石の多い水底にいる魚であるところから命名
ドンコ、ウキゴリ、ヨシノボリとも
「邸内でもっとも涼しいこの釣殿も、今日の尋常な暑さにはいっこうに役に立ちません。
失礼を許してもらいましょう」
そういうと、源氏は物に寄りかかって横になった。
「こんな暑い日にはぐったりして、管弦の遊びなど思いも寄りません。
かといって、何もしないで日が暮れるのを待つのも辛いことです。
最近世間に起こったことで、眠気の覚めるような珍しい出来事があれば是非お聞かせください。
年をとったせいか、私はこのところ世間のことにとんと疎くなってしまいましたから」
柏木や弁少将らはこれといって源氏に語って聞かせるような珍しい話題を思いつかないので、恐縮している様子で涼しい高欄に背中をもたせかけて控えていた。
「どこで誰に聞いたか忘れましたが、内大臣がよそで生ませた娘を捜し出して大切に世話をしておられるそうですね。
本当のことですか」
源氏は、内大臣の次男・弁少将にたずねた。
|