二十五帖 蛍
光源氏36 紫の上28 蛍兵部卿宮 玉鬘24 内大臣39
秋好中宮27 夕霧15 明石の君:27 柏木20
明石の姫君8 髭黒右大将 花散里22
紫式部像と宇治川と宇治橋
第45帖「橋姫」から第54帖「夢浮橋」までの
〈宇治十帖〉は光源氏没後の物語で、宇治が舞台。
『紫式部像』の手前を右にお茶の香りの中を5~6分歩くと
世界文化遺産の『宇治平等院』。
川向こうには世界文化遺産の『宇治上神社』
や『宇治神社』、『宇治市源氏物語ミュージアム』などがある。
光源氏 玉鬘 蛍兵部卿宮 花散里
帷子の隙間からそっと中を覗くと、一間ほど隔てた辺りに思いもかけず無数の点滅する蛍の光がほのかに玉鬘を照らしている。
なんと幻想的で雅な情景ではないか。
近くにいた女房たちがすぐに几帳を立てて玉鬘の姿を隠したが、一瞬の目撃は十分、蛍宮が恋に落ちるきっかけとなった。
源氏の思惑どおり、玉鬘の姿が蛍宮の心に深く刻まれたのである。
蛍宮、
○ 鳴く声も 聞こえぬ虫の 想ひだに
人の消つには 消ゆるものかは
鳴く声も聞こえない虫、蛍のほのかな光でさえ、
人が消そうとしても消えません、まして私の恋の火は
玉鬘の返歌、
○ 声はせで 身をのみ焦がす 蛍こそ
言ふよりまさる 思ひなるらめ
声にはださず身を焦がすだけの蛍の方が
口にするあなた様より思いが深いことでしょう
つれない返歌をすると、玉鬘はさっさと奥の部屋へ入ってしまった。
玉鬘のひどくよそよそしい返歌と冷たい態度に気持ちが萎えた蛍宮は、まだ夜が明ける前に肩を落として六条院を退出した。
翌朝、玉鬘つきの女房たちが噂しあっている。
「蛍兵部卿宮さまのご容姿や所作振る舞いの優美さは、ご兄弟だから当然でしょうが、源氏の君とたいそう似ていらっしゃいました」
「昨夜、源氏の君はまるで母上のように姫君のお世話を熱心になさっておられましたわ」
実情を知らない女房たちは、
「本当に、もったいないことです」
源氏の振る舞いを心からありがたいと思って感謝しているようだ。
玉鬘は、うわべは実の父親のように振る舞いながら、二人っきりになると執拗に口説いてくる源氏の言動に思い悩んでいた。
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