二十四帖 胡蝶
光源氏.太政大臣36 紫の上28 蛍兵部卿宮 花散里22
秋好中宮27 夕霧中将15 明石の君:27
玉鬘 24 髭黒右大将 明石の姫君8
楓の紅葉
比企丘陵 埼玉県
柏 橘の実の摘み取り
六義園 東京 石清水八幡宮 京都
「さあ、どうでしょうか。
わたしは若いころ、光君の堪えきれないほどの度重なる浮気に思い悩んだことは二度三度ではございませんでした」
いまは気持ちに余裕があるのか、紫の上は微笑している。
「それは邪推というものです。
もし、あなたの仰るようなことであれば、姫も気が付いておりましょう」
とはいうものの、源氏は図星を指されたような気もしていた。
何より恐ろしいのは女のカンである。
玉鬘の人となりを少しほめただけで、たいせつな紫の上に道ならぬ恋心を見抜かれてしまった。
雨が少し降った後のしっとりした夕方、庭先の若い楓や柏木などが、青々と茂っているのが、この姫君のご様子の、つややかな美しさをお思い出しになられて、いつものように、ひっそりとお越しになった。
手習いなどをして、くつろいでいらっしゃったが、起き上がりなさって、恥ずかしがっていらっしゃる顔の色の具合、とても美しい。
物柔らかな感じが、ふと昔の母君を思い出さずにはいらっしゃれないのも、堪えきれなくて、
「初めてお会いした時は、とてもこんなにも似ていらっしゃるまいと思っていましたが、不思議と、まるでその人かと間違えられる時々が何度もありました。
感慨無量です。
中将が、少しも昔の母君の美しさに似ていないのに見慣れて、そんなにも親子は似ないものと思っていたが、このような方もいらっしゃったのですね」
とおっしゃって、涙ぐんでいらっしゃった。
箱の蓋にある果物の中に、橘の実があるのをいじりながら、
「あなたを懐かしい母君と比べると、とても別の人とは思われません。
いつになっても心の中から忘れられないので、慰めることなくて過ごしてきた歳月だが、こうしてお世話できるのは夢かとばかり思ってみますが、やはり堪えることができません。
お嫌いにならないでくださいよ」
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