王朝女流作家と地方①
周防国府址
国衙こくが≒県庁 山口県防府市国衙
清少納言は父・清原元輔が「周防守すおうのかみ」として赴任したときに同行、4年間を『周防国』で過ごしたが、都への手紙の中で、
「田舎には文化の香りがない」と腐している。
清少納言 康保3/966年頃~万寿2/1025年頃
時の権力者・藤原道隆の娘、定子中宮に仕えた。
越前国府址
紫式部は父・藤原為時が『越前守』として赴任したとき同行、約2年間を「福井県越前市」で過ごした。
紫式部 天延1/973年頃~長和3/1014年頃
道隆の弟・藤原道長の娘、彰子中宮に仕えた。
★清少納言と紫式部にかぎらず、平安時代の女流作家たちは多く地方官(国司/国守)の娘。『源氏物語』では明石の君が『地方官』
の娘で、肩身の狭い身分として扱われている。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
二条院に戻ると、源氏はしばらく身体を休めたあと、紫の上に大堰の里でのことを話し始めた。
「申し訳ありません、予定よりも長く留守にしてしまいました。
例の風流人たちが急に都からやってきて、引き止められたのです。
昨晩は遅くまで飲み交わしたので、今朝は気分が悪い」
紫の上の表情は険しい。
「比較にならない身分の者と、ご自分を比べることはありません」
夕暮れどき、参内するため二条院を出るとき、源氏が周囲から隠れるようにして手紙を書いている。
明石の君に宛てたのであろう。
それから、源氏は使いの者を呼んで耳打ちしながら手紙を持たせたが、その様子を目撃した紫の上の女房たちは眉をひそめて囁き合っている。
その夜、源氏は宮中に泊まる予定であったが、朝から不機嫌だった紫の上の様子が気になって、夜が更けてから退出した。
二条院に戻ると、丁度そこへ使いの者が返事を手に帰ってきた。
急なことで取り繕うこともできず、源氏は紫の上の目の前で手紙を開いて読むほかない。
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