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だが、ふたりとも危険な逢瀬であればあるほど、かえって燃えあがる性分のようである。
朧月夜は、自分が朱雀帝の第一の想い人であることを忘れたかのように、源氏にのめりこんでゆく。
具体的な描写こそないが、「源氏物語」が官能的な女性を描くのは朧月夜が初めてだ。
「女にも性欲があり、自ら性を楽しむへきだ」と作者の紫式部は言いたいのだろうか。
なにしろ他のヒロインたちは夕顔をのぞいて、ひたすら「待つ女」であり、ほとんど男たちの性的対象でしかない。
「通い婚」という当時の婚姻制度が、そうさせるのだろう。
源氏も、朧月夜の官能的な魅力に溺れてゆく。
夜明け近くになって、源氏が、「そろそろ帰らなければ」と思い始めた矢先、急に、雨が激しく地面を叩き、ほどなく稲妻の閃光とともに雷鳴が耳をつんざいた。
源氏は帰るに帰れず、そのまま寝台に横になっていた。
手引きしている女房たちはどうすればいいのか分からず、おろおろしている。
やがて、雷がやんで雨もいくぶん小降りになった。
東の空が白み始めたころ、右大臣が見舞いにやってきたが、まず姉の弘徽殿大后の部屋に立ち寄った。
しかし、雨の音に紛れて、源氏も朧月夜も気がつかない。
御簾(みす)
まもなく、右大臣が朧月夜の部屋に入ってきた。
御簾を巻き上げながら、
「いががですか。昨夜はひどい荒れ模様で心配していましたが、お見舞いに来られませんでした。だれか、そばに付いていましたか」
近くで聞く右大臣の話しぶりは異様に早口で落ち着きがなく、軽率な感を否めない。
公卿僉議中、だらしなく足を投げ出したり、意見のちがう相手に対していぎたなくヤジを飛ばしたりもする。
*公卿僉議(くぎょうせんぎ)---内裏(だいり)や院における公卿の会議
その行儀の悪さは、後世の、とある総理大臣の国会審議中における態度や答弁ぶりを彷彿とさせる。
源氏はこんな危険な時に、舅(しゅうと)である左大臣の泰然とした風貌を思い出して、右大臣とは比べようもないとつい苦笑した。
光る源氏の物語〈上〉 大野 晋・ 丸谷才一 (中公文庫)/中央公論社
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9/10 関東と東北が豪雨災害 9/14 阿蘇山が噴火
天変地異ともいえる自然現象が続きます。
天が、国民や憲法を蔑ろにして「戦争国家」へ突き進む安倍政治に怒っているのならば、国民はとんだとばっちり。
重苦しい日本列島に、(私にとって)一服の清涼剤です。まだまだ人気はありそうで、ひと安心。わが子を見守るような年配女性たちのまなざし。ハンカチ王子以来のファンなのかな。
自民党の「だまし討ち」か「作戦勝ち」か。参院自民党も、首相官邸の指図どおりに動いている。
衆議院と同じならば、参議院はいらない