寝殿造り
平安中期に成立した貴族の住宅形式。中央に寝殿をおいた 寝殿(しんでん)
寝殿造りの中心的な建物。正殿(せいでん)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
王命婦と弁の君は、中宮の心を二度とかき乱してはならないと黙っていた。
しばらくして、藤壷中宮が昼の御座(ひのおまし)にやってきた。
「どうやら、回復したようだ」
兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)たちが帰っていくと、急に人が少なくなってひっそりと静かになった。
それでも、あちらの屏風(びょうぶ)やこちらの几帳(きちょう)の蔭に身を隠して、女房たちが控えている。
王命婦と弁の君は、ひそひそ囁きあっている。
「どうすれば、源氏の君をどなたにも気づかれないように塗籠(ぬりごめ)のお部屋からお出しできるかしら。今夜また、中宮さまがお倒れになったらお気の毒だわ」
昼の御座(ひのおまし) 寝殿の母屋
そのころ、源氏は塗籠の戸をそっと開けて、昼の御座の様子を見つめていた。
中宮は、憂いを帯びた表情で遠くの方を眺めている。
源氏は、中宮のお心を煩わせて「申し訳ありません」と心のうちで反省した。
中宮の横顔は、何とも言いようがないほど優美である。
昼ひなかの明るいうちに、中宮を見るのは、もしかしたら内裏(だいり)で暮らしていた子供のとき以来かもしれない。
懐かしさと嬉しさで、涙が源氏の頬を伝った。
女房が、箱の蓋に美味しそうに盛られた果物をもってきた。
「せめて果物でも、お召し上がりください」
しかし、中宮は振り向きもしなかった。
源氏のことで悩んでいるのか、物思いに沈んでいる様子がいかにも痛々しい。
中宮は、髪の生え際や頭のかたち、肩と背中に髪のかかった様子や匂うような美しさなど、紫の上とそっくりである。
監修:谷崎潤一郎 光源氏:長谷川一夫
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国家主義者・安倍晋三は、日本を中国のよ 「組閣ごっこ」だそうです。
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賢木28藤壷中宮
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