森羅万象との交響
あれはいったい何だったのだろう。
雨に洗われた木々の緑とわたしの魂とが、直につながり、響きあった。
どこか夢の中の出来事のようであり、現実のようでもあった。
親しく語りかけてくる樹木や草花、はてしなく広がる紺碧の空、心地よく頬を撫でていく涼風、激しく降ってくるセミたちの鳴き声。
それら自然のものと一体になった心持ちで、私は、山を下っていた。
しかし、両の足は地につかず、宙を踏んでいる。
わたしと森羅万象を隔てていた膜が1枚、剥がれたような気がした。
空の青や木々の緑が、かつてないほど鮮やかに見え、心に深くしみた。
風のそよぎやセミたちの絶唱が、無性にいとおしい。
大学1年の夏休み。
東京の私立大学に進んだわたしは、郷里の福岡へ初帰省していた。
学生時代を通して、帰省する時は、京都と大阪の大学に進んだ高校時代の同級生を訪ね歩いたあと、福岡市在住の友人らと遊びまわるのが常であった。
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自然との一体感 ①森羅万象との交響
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