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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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女君たち⑥情事と死

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長谷川一夫
 長谷川一夫の光源氏と木暮実千代の藤壺の宮

乙羽信子 乙羽信子の若紫(紫の上)

京マチ子長谷川一夫
 京マチ子の淡路の上(明石の君)

   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇

二条院につれて帰りたいとさえ思った。


夕顔の家に初めて泊まった翌朝、寝ている枕もとの壁ごしに男や女の繰り言が聞こえてきた。

「おお、寒い。なんて寒いんだ、今朝は」

「今年は、商売があがったりだよ。いいことは何にもない」

「年の暮れが、心細いねえ」

宮中と二条院で暮らしている源氏が耳にしたことのない、つつましい庶民の暮らしの声だった。


八月十五日の夜に泊まった翌朝、源氏夕顔をもとは立派な邸宅だったが、今は崩れかけている廃院に連れだした。

だれに気兼ねすることもなく、日がな一日心ゆくまで情事にふけった十六日の夜、源氏の夢枕に美しい女がすわっていた。

「わたしの気持ちをご存知なのに、光君はこんな平凡な女と」

そして、いきなり隣に寝ている夕顔に襲いかかった。

夕顔1
夕顔(芦名星)をとり殺す六条御息所(田中麗奈)の生霊


このとき初めて、源氏は目の前で人が死に絶える様子を目撃するが、ショックは大きくしかも長く尾をひいた。

夕顔は<恋路の支流>だが、川幅の広い支流である。

ある女流作家は、「源氏が性愛の奥義に目覚めたのは夕顔のおかげ」という。



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