千年の恋 ひかる源氏物語
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源氏物語 千年の謎
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
月は、もう山に入ったのであろうか。
なんとなく、物思いに沈みがちな空模様である。
「伊勢下向をとりやめて、ぜひ都に残ってください」
源氏が涙ながらに懇願すると、御息所(みやすどころ)もまた胸がつまって涙をこらえきれない。
長いあいだに積もり積もっていた恨み辛みが、御息所からたちまち消えてしまった。
悩みに悩んだ末、「今度こそは」と娘の斎宮(さいぐう)に付き添って伊勢に下ることで未練を断ち切るはずだったが、源氏の顔をみると予感していたとおり決心がぐらついた。
心が、乱れた。
時折、御息所を慕って都から若い公達(きんだち 上流貴族)たちが何人かずつ連れだって訪れては逍遥する庭の風情は、まことに優雅な趣をそなえている。
ちなみに、源氏と御息所の出会いは、若い源氏が学問や文芸の師をもとめて御息所を訪ねたことがきっかけである。
ことほどさように、御息所は知性と教養ともに優れていた。
宮中に知れわたっていた。
その夜、ふたりに何があったのか、だれも知る由もない。
○ 暁の 別れはいつも 露けきを
こは世に知らぬ 秋の空かな
あなたとの明け方の別れはいつも涙に濡れていましたが、今朝の別れは今までになく切ない秋の空のようです
一首詠んだあと、御息所の手をとって帰りたくなさそうにしている源氏の様子はやさしさにあふれている。
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振り上げたこぶしを下ろすだろうか
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賢木⑦暁の別れ
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