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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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末摘花⑩命婦の悩み

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小野小町
 小野小町と六歌仙 歌川豊国画


簀子 簀子(すのこ 縁側)


瘧(わらわ)病みを患ったり禁断の恋愛事件を起こしたりして、心にゆとりのないまま春がすぎ夏が過ぎた。

秋になって、静かにもの思いにふけっていると、あの夕顔の宿の砧(きぬた)の音やうるさくて耳障りだった碓(からうす)の音が恋しく思い出される。

常陸宮邸にはたびたび手紙をもたせるが、あいかわらず返事がない。

あまりに人の情けを解しない態度が気にさわるが、このまま引き下がってなるものかと、意地になって、大輔の命婦(たいふのみょうぶ)をせめた。

命婦こそ、とんだとばっちりだ。

「どういうことなんだ。こんな無礼な目にあったことは、今まで一度もない」

「不釣り合いなご縁などと姫君に申し上げたことは一度もございません。内気な性格がすぎて、お返事をお出しになれないのでしょう」

「それが世間知らずというもの。親がかりで自分の身が思うにまかせない年頃なら分かるが、もう分別のつくだろうと思うからお手紙を差し上げるのだ。
色めいたことをしたいわけではなく、あの荒れた簀子に佇んでみたいだけなのだ。姫君のお許しがなくても、うまく取り計らって手引きしておくれ。見苦しい振る舞いはしない」


源氏は世間の女のうわさを聞き集めて、その中から、「これは」という女を覚えておく習慣が身についている。

命婦が教えた末摘花は、その一人である。

夕顔を亡くして悲しみに暮れている源氏に、夕顔とタイプが似ているということで話したのだ。


だが、命婦は少々煩わしくなっている。

源氏を手引きするのも気が重い。

実際の末摘花の、女としての魅力はどうか。

当代一位と二位の貴公子、源氏頭の中将を夢中にさせるほどの魅力があるか。

女らしさには欠け、おとなしくて控えめだが奥床しさはあまり感じられない。

そして、何より、あの容姿。

源氏を手引きすれば、末摘花は困るかもしれない。

絶世の美女だったといわれる先輩の小野小町に対して、こちらは目を覆うばかりの人間離れした醜女(しこめ)なのだ。


紫式部は、美人の容貌は興味なさそうにさらっと書き流すが、ブサイクの場合はなかなかどうして辛辣である。





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