空蝉(うつせみ) 軒端荻(のきばのおぎ) 小君(こぎみ)
木画紫檀碁局(もくがしたんのききょく=碁盤) 東大寺正倉院蔵 聖武天皇遺愛の品 ○平安時代の貴族たちは男女を問わず、日常的に囲碁に親しんだ
源氏が小君の手引きでいくつか部屋を進むと、大柄な女と小柄な女が囲碁に興じていた。
碁盤をはさんで小柄な女の肩越しに見える大柄な女は軒端荻(のきばのおぎ)。
伊予介の先妻の娘にして、紀伊守の妹だ。
つまり、伊予介の後妻である空蝉には継娘(ままむすめ)にあたる。
色白で目鼻立ちのはっきりした華やかな顔立ちの美人だが、着物が胸元までしどけなくはだけていて豊満な胸のあたりがあらわになっている。
若々しいが、やや粗雑で品性を欠くようだ。
明るく陽気に囲碁を楽しんでいるが、もう少し落ち着きが欲しい。
一方、空蝉はどうか。
先日、一夜を共にしたが、小柄で痩せていた。
それ以外のことは、まるで分からない。
源氏には後ろ姿しか見えないが、時々横を向いたときに横顔が見える。
ひいき目に見ても、美しくはない。
目は腫れぼったく鼻筋は通っていず、華がない。
しかも、顔の表情がなんとなしに老け込んでいる。
器量では、軒端荻に数段おとる。
美少年の弟・小君とは似ていないようだ。
しかし、空蝉が身にまとっているたおやかな雰囲気が、不美人であることを意識させない。
対局中、軒端荻に話しかける言葉もしっとりとして品が良く、落ち着いている。
碁石を碁盤に置くときの所作も優美で、たしなみ深い。
ふたりの対照的な女を見比べて、源氏は若くて美貌の軒端荻ではなく、地味だが品の良い空蝉に軍配をあげた。
空蝉への想いを一層深くして、一旦その場を離れた。
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