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藤壺⑳覚悟の落飾

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$吉備路残照△古代ロマン  平安神宮  祭神は、桓武&孝明天皇。1895(明治28)年4月1日、平安遷都1100年を記念して開催された内国勧業博覧会の際に、平安京遷都時の大内裏の一部復元を計画。実物の8分の5の規模で復元された。


藤壺は源氏に心身ともに疲れはて、桐壺院をだまし通した罪に震えた。

眩暈がして、底知れぬ闇に堕ちて行く。

薄らぐ意識の中、「源氏とともに、奈落の底に堕ちたい」と願っていた。

「中宮様、大丈夫ですか」

女房たちの叫び声が聞こえるが、すぐに遠のいていった。


御簾(みす)の外では、源氏が呆然と立ち尽くしている。

もう明け方に近い。

「人が来ます。早く、どこかへ隠れて下さい」

女房たちの声に、源氏は塗籠(ぬりごめ:納戸)に身を隠して、息をひそめた。


藤壺の兄の兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)らがやって来て、何やら話している。

源氏が出るに出られないうちに、とうとう日が暮れてしまった。

「中宮様は、ずいぶん御気分が良くなられたようだ」

兵部卿宮たちが、ようやく帰って行く。


女房たちが見送りに出ているすきに、源氏は塗籠を抜けだし、御簾を跳ね上げて藤壺の部屋へ入った。

藤壺は、驚くまいことか。

「あのとき」以来の藤壺は、消え入るように儚げで美しい。

源氏は胸がつまって、目から涙が溢れた。


藤壺は、視線を逸らした。

「気分がすぐれません。どうか、お帰りになって下さい」

女房たちも、きつく帰るように促した。

源氏は夢遊病者のような足取りで、暗闇に消えて行く。

あとに、藤壺の嗚咽が闇夜に響きわたった。


桐壺院の1周忌、藤壺は突然、出家の意志を明らかにした。



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