何か月か経って、やっと若宮(のちの光源氏)が宮中へ戻ってきた。
ごく幼いころから目を見張るように可愛らしかったが、ますます光り輝くほどの美貌になっている。
翌年、立太子(皇太子に立てる)のことがあった。
桐壺帝は、若宮を皇太子にしたかった。
ちなみに、当時は、長男が跡を継ぐという慣習はない。
生母の実家の権勢によることが多かった。
若宮には、母の桐壺の更衣はすでに亡く、祖父の大納言もとうに亡くなっている。
つまり後見人(後ろ盾)は、なきに等しい。
もし若宮を皇太子に立てると、弘徽殿女御側の反発が凄まじいだろう。
若宮に、身の危険さえある。
彼女の父親は右大臣であり、もっとも政治力があった。
帝はそのようなことを考えて、不本意ながら弘徽殿女御の子である第一皇子(のちの朱雀帝)を皇太子に立てる。
これを見て、都の口さがない連中はささやきあった。
「あんなに可愛がっていても、若宮を皇太子にできないのか」
弘徽殿女御は、「もしかしたら……。」と少なからず不安に思っていただけに、ほっと胸をなでおろした。
一方、孫が皇太子になることに秘かに期待を寄せていた外祖母は落胆する。
「娘のいる浄土へ行くことのほかに、もはや何の望みもない」
ひたすら阿弥陀仏の来迎を願う一方、孫との別れを悲しみながら亡くなった。
若宮の血縁者は、父の桐壺帝だけになった。
帝は、若宮が祖母を失ったことを悲しんだ。
若宮は、そのとき6歳。
母の死のときとちがって、祖母の死を理解できた。
7歳のときに、「書初めの式」が行なわれる。
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