大内裏 (だいだいり)
古代、帝の住まいである内裏と政府諸官庁の置かれた区画
この世のものとも思えないほどに清らかで、美しい顔立ちである。
帝は、最愛の桐壺更衣が産んだ子でもあり、まわりの者があきれるほどの愛情を注いだ。
帝にはすでに第一夫人である弘徽殿女御(こきでんのにょうご)との間に、第一皇子(後の朱雀帝)がいる。
後見人(後ろ盾)は、右大臣という当代きっての権勢家である。
第一皇子がいずれ東宮(とうぐう:皇太子)になるだろうことは衆目の一致するところであったが、容姿と聡明さとにおいて、第二皇子(後の光源氏)にはるかに及ばなかった。
だからということでもあるまいが、帝は第一皇子に対しては、通り一遍の愛情しか示さなかった。
思えば、まだ弘徽殿女御を中宮にしていない。
それやこれやで、彼女が疑心暗鬼になるのも無理からぬことだった。
「帝は、第二皇子を東宮に立てるつもりではないか」
そういう疑念が、宮中の空気となって帝に伝わったのだろう。
何といっても、弘徽殿女御は右大臣の娘で第一夫人である。
帝としても、その思惑を無視することはできない。
更衣にうつつを抜かしていることを、「すまない」という気持ちもないではなかった。
その年の夏、更衣はますます心身を消耗して実家に戻りたいと訴えるが、やはり帝は許さなかった。
数年来のいつもの症状だろうと、さほど心配する風ではない。
「しばらく、宮中で様子を見よ」
しかし、更衣の病状は日に日に重くなって、5~6日のうちに目に見えて衰弱していった。
そのことを聞きつけた更衣の母君が参内、涙ながらに頼んでやっと里帰りすることになる。
若宮(光源氏)を帝の手元に残して、人目につかないように内裏を退出した。
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この世のものとも思えないほどに清らかで、美しい顔立ちである。
帝は、最愛の桐壺更衣が産んだ子でもあり、まわりの者があきれるほどの愛情を注いだ。
帝にはすでに第一夫人である弘徽殿女御(こきでんのにょうご)との間に、第一皇子(後の朱雀帝)がいる。
後見人(後ろ盾)は、右大臣という当代きっての権勢家である。
第一皇子がいずれ東宮(とうぐう:皇太子)になるだろうことは衆目の一致するところであったが、容姿と聡明さとにおいて、第二皇子(後の光源氏)にはるかに及ばなかった。
だからということでもあるまいが、帝は第一皇子に対しては、通り一遍の愛情しか示さなかった。
思えば、まだ弘徽殿女御を中宮にしていない。
それやこれやで、彼女が疑心暗鬼になるのも無理からぬことだった。
「帝は、第二皇子を東宮に立てるつもりではないか」
そういう疑念が、宮中の空気となって帝に伝わったのだろう。
何といっても、弘徽殿女御は右大臣の娘で第一夫人である。
帝としても、その思惑を無視することはできない。
更衣にうつつを抜かしていることを、「すまない」という気持ちもないではなかった。
その年の夏、更衣はますます心身を消耗して実家に戻りたいと訴えるが、やはり帝は許さなかった。
数年来のいつもの症状だろうと、さほど心配する風ではない。
「しばらく、宮中で様子を見よ」
しかし、更衣の病状は日に日に重くなって、5~6日のうちに目に見えて衰弱していった。
そのことを聞きつけた更衣の母君が参内、涙ながらに頼んでやっと里帰りすることになる。
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