島根県安来市広瀬町
わたしの夫 オオクニヌシ
あなたは男です
あちらこちらの島の港に
あちらこちらの磯の浜辺に
若草のようにつやつやとして美しい妻をお持ちでしょう
わたしは女の身です
あなた以外に男はいません
あなたの他に夫はいません
綾織りの帳(とばり)がふわふわと垂れている部屋で
柔らかな絹のふとんの中で
泡雪のように白くて若々しいわたしの乳房に
わたしの白い腕に そっと触れてください
玉のように綺麗なわたしの手をぎゅっと握って愛撫して下さい
そして手を絡めましょう
それからわたしの手を手枕として
足を伸ばしてお寛ぎなさいませ
さあ、美味しい御酒をお召し上がりください
スセリビメはこう返歌すると、オオクニヌシと夫婦の契りを固め、互いに抱きしめあった。
そして平成の今も、出雲の地に仲睦まじく鎮座している。
『縁結びの神』といわれる所以である。
しかし、これでオオクニヌシが年貢を納めたわけではない。
大国(たいこく)を治めるほどの神ともなると、一筋縄ではいかないのだ。
『因幡の白兎』のころの、純朴でやさしいイメージとはずいぶん違う。
「英雄色を好む」というが、オオクニヌシは艶福家である。
その点、光源氏の直系の先祖である。
両者ともに水もしたたる美男子で、あらゆる学問や芸事に通じたスーパーマンだ。
また、他にやることがなかったのかと突っ込みたくなるほど、多くの女神と情事を重ねつづけた『愛欲神』である。
光源氏は、神ではなく人間だが。
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