ワニの背中を跳ぶ白兎
「ウサギさん、どうして泣いているの?」
オオクニヌシが、たずねた。
「ぼくは隠岐の島に住んでいるのですが、ずっとこちらに来たいと思っていました。でも、海を渡る方法がありませんでした。そして、ある日、ある計略を思いついて、ワニたちに持ちかけたのです。
『ワニさんたちとぼくたちウサギと、どちらが仲間が多いか比べてみましょうよ。仲間をみんな集めて、ここから気多の岬まで並んで下さい。ぼくが、ワニさんたちの背中を跳びながら数えましょう』
ワニたちは海面に一列に並んでくれました。ぼくはワニの背中を跳んで、こちらへやって来ました。そして、最後のワニの背中を跳びはねて陸地に下りようとした時、つい本心を漏らしてしまったのです。
『や~い、お前たちは騙されたんだぞ~』
すると、怒ったワニたちはぼくを捕えて、皮を剥いでしまいました。騙したのだから、自業自得です。
それから、先ほど通りかかった八十神に教えられた通りにしたら、このありさまです」。
オオクニヌシは、やさしく教えた。
「川へ行って、真水で傷をきれいに洗いなさい。それから、蒲(ガマ)の花粉を敷いて、その上で転がりなさい。きっと治るよ」
兎がその通りにすると、身体がすっかり元通りになった。
そういうこともあって、オオクニヌシは、「医療の神」としても崇められている。
兎はのちに、白兎神(しろうさぎのかみ)と呼ばれるようになる。
また、兎はオオクニヌシに予言した。
「ヤガミヒメは、八十神ではなく、あなたを選ぶでしょう」
なお、この神話から、白兎を祭る白兎神社(はくとじんじゃ 鳥取市)は、「未知の異性との出会い」ではなく、「意中の人との結縁」にご利益があるとされている。
八十神たちはヤガミヒメに求婚するが、きっぱりと断られた。
「私は、オオクニヌシ様と結婚します。どうぞ、皆さんはお引き取りください」。
怒った八十神は、オオクニヌシを殺そうとする。
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大国主②因幡の白兎
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