大江広元
朝廷の官人から頼朝の側近に。鎌倉幕府の政所初代別当
「どんな疑念があろうと、兄上は私と会うべきだ」
「九州の惣追捕使(のちの守護に近い)に叙せられ、山陰か山陽か南海道のいずれかを預けられて西国の警護に任じられると思っていたが、わずかに伊予国(愛媛県)を与えられただけ」
「鎌倉に入れずに腰越へ追い返すとは何事か。そもそも日本国を鎮めたのは木曽義仲とこの義経ではないか。」
「同じ父の子で先に生れたのを兄とし、後に生れたのを弟とするだけのこと。天下を治めるのはどちらでもいいはず。それを会おうともせずに追い返すとは。私の何が悪いのか」
あれこれ訴えたが、頼朝は聞く耳を持たない。
義経は泣く泣く一通の手紙を書いて、大江広元(ひろもと)に送った。
後世にいう、「腰越状」である。
「源義経、恐れながら申し上げます。私は代官の一人に選ばれ、勅命を受けた者として朝敵を征伐し、源氏の会稽の恥(かいけいのはじ)を雪(すす)ぎました(仇を討った)」
本来ならば褒美を頂けるところを思いがけない讒言によって、大きな勲功を失ってしまいました。私は無実の罪を受けております。功績こそあれ誤りはないのに、兄上の怒りを買っており、血の涙に暮れております」
「告げ口した者の言葉の真偽を確かめようともせず、しかも私を鎌倉に入れて頂けなければ思いを述べることすらできません。いたずらに日々を送っております」
「今に至るも、兄上にお目にかかることができません。血を分けた兄弟の間柄も途絶え、前世からの因縁も消えたのでしょうか。それとも前世の罪業がこうさせるのでしょうか」
「悲しいことです」
「亡き父・義朝が再びこの世に現れて下さらなければ、いったい誰が私の悲嘆に耳を傾けてくれるでしょう。だれが、憐れみをかけてくれるでしょう」
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北朝鮮は、「人工衛星」という名の「長距離弾頭ミサイル」発射のために8億5000万㌦を投じたそうだ。
この金で食糧を購入すれば、6年間、国民の飢餓状態を解決できるという。
そういう発想のかけらもない政治とは一体何なのか。
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平家物語の群像 対立⑥腰越状(大江広元への手紙)そのⅠ
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