梶原景時が、義経に先陣を申し出た。
「今日の先陣をば景時に賜(た)び候へかし」
「義経がなくばこそ(いなければ)」
「正なう候ふ(それぱおかしい)。殿は大将軍にしてましまし候ふものを」
「おかしなことを言う。頼朝殿こそ大将軍だ。俺はただ軍(いくさ)の奉行を命じられている身。貴殿らと同じ立場よ」
景時は、先陣の希望が叶わず聞こえよがしに呟いた。
「天性この殿は、侍の主(あるじ)には成り難し」
それを聞きとがめた義経が、太刀の柄に手をかけた。
「日本一の烏滸(おこ:愚か)の者かな」
景時も、太刀の柄に手をかける。
「鎌倉殿(頼朝)より外は、主をば持ち奉らぬものを」
ただならぬ様子の父・景時を見て、嫡子の景季(かげすえ)や次男の景高ら、
主従14、15人が太刀の鞘(さや)を外して義経に迫った。
一方、伊勢義盛や佐藤忠信、武蔵坊弁慶ら一人当千の義経の郎党たちが、梶原勢を取り囲んで討ち取ろうとする。
あわや!!という時、義経には三浦義澄が取り付き、景時には土肥実平がすがりついた。
「これほどの大事を前に同士討ちなどしては、平家を勢いづかせましょう。しかも、このことが頼朝殿のお耳にでも入ったら無事では済みますまい」
義経と景時は、やむなく鉾を収めた。
このとき以来、景時は義経を憎み始め、事あるごとに頼朝に讒言して義経を死に至らしめたと言われている。
源義経 (岩波新書)/岩波書店
¥777
Amazon.co.jp
ザ・ニュースペーパー 時代を笑え!/グラフ社
¥1,400
Amazon.co.jp
内容はいささか古いようですが、「ザ・ニュースペーパー」、如何ですか。
ニセ東国原英夫宮崎県知事(当時)の、「まだまだですよ~」など、実にワサビの利いた風刺になっています。