扇に描かれた日の出は、夕日に輝やきながら白波の上を浮きつ沈みつしながらたゆたっている。
沖では、平家の面々が感服して船のわきを叩いている。
陸では、源氏勢が箙(えびら:矢を入れて肩や腰に掛け、携帯する武具)を叩いて喝采している。
あまりの素晴らしさに感極まったか、平家方から、黒革威の鎧を着た50歳ほどの男が、白柄の長刀を杖にし、扇を立てたところに立って舞い始めた。
伊勢義盛が、与一のそばに馬を近づけた。
「殿のご命令だ。あの男を殺せ」
さっき、「義経の命令に従わぬ者は、鎌倉に帰れ」と言われたばかりだ。
与一は鋭い矢尻の矢を弓につがえると、与一の腕前に感心して浮かれ躍っている男の心臓めがけてひゅうと射た。
男は、心臓を射抜かれて舟底へ真っ逆様に倒れた。
源氏方ですら、「みごとに心臓を射抜いた」とほめる者は少なく、「何と非情な!!」と非難する者の方が多かった。
ほめそやしたのは、平泉以来の義経の郎党か。
平家方は、静まり返っている。
見てはならないものを見てしまったという重苦しい空気が、海上に流れている。
しばらくすると、平家方から、弓を持った者、楯を持っている者、長刀を提げている者3名が、船を飛び下りて上陸した。
わずか3名である。
よほど源氏の所業が許せなかったのだろう。
「犬畜生にも劣る源氏の者ら、戦え」
「生意気な。騎馬に長けた若党ども、駆け込んで蹴散らせ」
義経が命じると、武蔵国の美尾屋四郎、同・藤七、同・十郎、上野国の丹生四郎、信濃国の木曽中次の5騎が、
馬を並べ、雄叫びを上げながら平家方の3名に突進した。
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アムネスティなどの民間団体に任せておける時期はとうに過ぎた。国連などの公的な国際機関が、
一定の権力を持って乗り出さないことには何も変わらない。
少数民族とはいえ、チベットとウイグルと内モンゴルはかなり広い(国土)と人口をもち、世界的にも注目されている。
一方、中国には60近い少数民族が住んでいると言われるが、彼らの中にはもっともっと悲惨な状態に苦しんでいる種族がいるのかも知れない。