ミロ美術館 バルセロナ
赤ら顔の大男は小さな机に両手をつくと、三太郎をにらみつけ、毛むくじゃらの右手で、机をドンと叩いた。
「あんたかね、聞き分けのない日本人というのは」
英語だ。
ゾクッと冷たいものが、三太郎の背中を走った。
これではヤクザと同じではないか。
やはり裏世界(マフィア)と繋がっているのか、この店。
もう一つ、疑問が浮かんだ。
この、映画やテレビドラマなどで目にしたことのある警察の取り調べ室を想わせる部屋に連れて行かれた外国人客は、三太郎が初めてではないはずだ。
店長とだて男と外国人客の3人が、他の大勢の客が食事しているテーブルの間を縫って歩いていく。
異様な光景だろう。
地元の人々のあいだで、「あのレストランはおかしい。時々、外国人客を店の奥の部屋に連れ込んでいるぞ」といった噂が立たないものだろうか。
歓楽街ではなく、首都マドリードに次ぐスペイン第2の都市の目抜き通りに面しているのだ。
あるいは、噂がたってもそれっきりなのか。
もしかしたら、治安に対する日本人の感覚を持ち込むこと自体、間違いなのかも知れない。
思い返すと、バルセロナで昼食をとるためにたまたま入った、通りからの見た目は小奇麗だが、実はいかがわしかったレストランには、外国人客から法外な金を巻き上げるための段階が幾つかある。
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だて男 ⑬聞き分けのない日本人
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