源氏物語名場面62
玉鬘 壱漆
大和龍祥霊場龍玉切絵御朱印 源氏物語切絵御朱印
☆
新年を迎えるにあたって新しい
二種類の切絵御朱印をご用意いたしました。
どちらも
令和六年にゆかりのあるデザイン
となっておりますので、お参りの際に
お手に取っていただければ幸いでございます。
大和国
長谷寺
🔲
豊後介
「早く、(長谷寺に)参りましょう」
右近が同調して、
「ご一緒に参りませんか」
お互いの供の者が怪訝に思うかも知れないので、
乳母たちが一足先に長谷寺に向かった。
右近が前を歩いている乳母一行に目を凝らすと、
一行の中に際だって優美な女人の旅姿があった。
後ろ姿は際立って気品があるが、身に着けている衣装などは粗末で足取りはおぼつかない。
右近は長年さがしていた玉鬘に違いないと確信した。
歩きなれてないうえに
母・夕顔の死を聞かされたばかり。
よろけるように足を運んでいる。
右近は、愛おしさが込み上げて目頭が熱くなった。
長谷寺の本堂は、諸国からやってきた大勢の参詣客で混み合っていてひどく騒がしかった。
右近たちには、
あらかじめ【本尊】の近くに場所を用意してあった。
寺側には、
右近が源氏の六条院に仕えていることが分かっている。一方、
初めて参詣する玉鬘や乳母たちには、
【本尊】から遠い場所をあてがわれた。
そのことに気がついた右近は手招きして、
「こちらにいらっしゃいませんか」
玉鬘と乳母は、豊後介たちを残して場所を移った。
右近が乳母に
「わたしはもともと賤しい身分ですが、
源氏の君のお邸にお仕えしておりますので、
旅先で無礼な扱いを受けるようなことはありません。
人々が大勢集まる場所では、
田舎者と見ると、
とかく柄の悪い連中がからかったり侮ったりします」
本堂は参籠の人々であふれ落ち着いて話すことが出来なかったので、翌日は右近の知り合いの寺の宿坊に移って、夕顔の思い出話などをして過ごした。
乳母たちは三日間参籠する予定だったので、
翌朝、
右近は互いの連絡先を知らせ合ってから先に都へ帰っていった。
・参詣さんけい 神社仏閣に訪れること
・参拝さんぱい 訪れた場所で神仏を拝むこと
・参籠さんろう 祈願のため、寺社などにある期間こもること
玉鬘⑯