源氏物語
35帖若菜下
源氏:41~47 紫の上33~39 女三宮15~21 夕霧20~26
明石の君:32~38 明石女御:13~19 柏木:25~31
髭黒左大将36~42 玉鬘27~33 冷泉帝23~29
光源氏 紫の上
京都市 風俗博物館
『源氏物語』は、3歳の時に母・桐壺更衣
を亡くした光源氏の〈母恋物語〉である。
4歳の時に祖母が逝去すると、父・桐壺帝の
計らいで母が住んでいた【桐壺】を与えられた。
その頃、源氏は女房に度々聞かされる。
「藤壺宮様は母上様と生き写しでございます」
母親の顔をまるで覚えていない源氏は、
宮に懐かしさを覚え成長とともに恋心に変わる。
1帖〈桐壺〉
18歳の春、源氏は病気療養の
ため北山(鞍馬山)に滞在していた。
散歩の道すがら、
ある家の庭を柴垣越しに垣間見ると
上品な尼君の方へ女の子が駆けて来る。
目を凝らすと、
女の子は藤壺宮と瓜二つではないか。
その少女(若紫)こそ、のちの紫の上である。
源氏は後日、
若紫を自分の「理想の女性」に育てようと
当時の邸である【二条院】に強引に連れ帰った。
5帖〈若紫〉
源氏の〈恋路の源流〉は
「母・桐壺更衣の面影」である。
源流から流れ始めた〈恋路の本流〉は、
母と生き写しの藤壺宮と宮と瓜二つの紫の上。
すなわち
藤壺宮は母の身代わり、
紫の上は宮の身代わりなのだ。
換言すると
源氏の〈恋路〉は「母の面影を追う旅」なのだ。
本流から分かれて
〈恋路の支流〉である数多の女君たちと源氏
との恋模様が『源氏物語』を華やかに彩っている。
番外〈恋路〉
「和泉式部と違って恋愛経験が決して豊富とは思えない
紫式部に何故これだけ多種多様な男女関係を書けたのか」どう思われますか。
言うまでもなく、恋愛は大長編の一端にすぎません。
「わたしはこれまで光君の愛情だけを頼りに生きてきた。
そのことでは、まだ誰にも負けないつもりだ。
しかし、齢を重ねればいずれ愛情も冷めよう。
そうなる前に、ぜひ俗世を離れたい」
紫の上は、かなり以前からそういう思いを抱いていた。
しかも、このところ父の朱雀院だけでなく冷泉帝までも女三宮に何かと特別の配慮をするようになった。
源氏としてはいつまでも女三宮を子供扱いできなくなり、夜になると宮のもとに足を運ぶことが多くなった。
紫の上は顔にこそ出さないが、心中穏やかではない。
紫の上は、源氏のいない夜の孤閨を慰めるために明石女御の娘・女一の宮を引き取って養育することにした。
女御本人も、養女として幼い頃から育ててきた経緯がある。