源氏物語
第34帖若菜上
源氏:39~41 紫の上31~33 女三宮13~15 夕霧18~20
明石の君:30~32 明石女御:11~13 柏木:23~25
「女三宮と猫」 鈴木春信画
浮世絵師である鈴木春信の手になるからか
平安時代の皇女というより江戸時代の町娘のよう。
蹴鞠けまりが催されていた時、
猫が御簾を巻き上げたため露わになった
女三宮(源氏の正妻)の容姿に柏木は一目惚れした。
源氏が朱雀院の姫宮(女三宮)を「正妻」として迎えて以来、
紫の上との関係がギクシャクして六条院に暗雲が漂う。
源氏の君がいつ怒りを爆発させて私や大后に報復されるか、世間の人々は興味津々のようでした。
しかし今に至るまで仕返しされることはなく東宮(春宮)をとても可愛がっておられるうえに、愛娘の明石の姫君が東宮に入内してくださったことを本当に感謝しております。
また、冷泉帝は何ごとも故桐壺院の御遺言通りに真面目に政治に取り組んでおられるのて、末世の名君として、至らなかった私の不名誉をみごとに挽回してくださっておられます。
先日、六条院へ伺ってからというもの昔のことがしきりに思い出されて、無性に源氏の君にお会いしてゆっくりお話しをしたいと思うようになりました。
お目にかかって申し上げたいことも多々ございます。
是非、お訪ね下さるようお伝え下さい」
朱雀院は、涙を拭っている。
夕霧、
「私には遠い昔のことは何とも分かりかねますが、父が
『むかし、辛いことがあってね』
などと口にしたことは一度もございません。
また、
『政務を執ることを御辞退して念願の出家を叶えるために隠棲して以来、世事には一切関わらないようにしていたので、故桐壺院の御遺言に反して朝廷に仕えることはなかった。
朱雀院の御在位中は、私はまだ若くて経験も器量も決定的に不足していた。
今は御退位されて政治から離れて静かにお暮らしになっているようだから、時々院御所に参上して心ゆくまで懐かしいお話をしたり伺ったりしたいと思っている。
しかし准太上天皇という立派な位をいただいているので軽々しく出かけるわけにはもいかず、ついつい参上できずにいる』
などと、時折口にしては嘆いております」
夕霧はまだ二十歳にもみたない若者だが、堂々としているだけでなく目を見張るほどに容姿端麗で輝くばかりに美しい。