第三十帖 藤袴
光源氏37 紫の上29 蛍兵部卿宮 玉鬘25 内大臣40
秋好中宮28 夕霧16 明石の君:28 柏木21
明石の姫君9 髭黒右大将32 花散里23
雲井の雁 弁少将 近江の君
冷泉帝19
吉野の滝
「和州吉野義経馬洗滝」
葛飾北斎画 諸国滝廻りから
源氏はきっぱりと断定的な物言いをするが、それでも夕霧の疑念は晴れなかった。
源氏は、夕霧の話を聞いて珍しく殊勝な気持ちになった。
「やはり、そうだったのか。
もし周りの者たちが推し量っているようになったら、それこそみっともないし恥ずかしいことだ。
内大臣には、何とかして、身の潔白をお知らせしなければ--」
また、
「表向きは宮仕えをさせるということにして、私自身の玉鬘への恋着を気付かれないよう気をつけていたが、見抜かれていたのだ」
源氏は、自分の愚かさに苦笑した。
「玉鬘の参内は、十月頃に--」
源氏がそう伝えると、冷泉帝はその日を心待ちにした。
他方、蛍兵部卿宮や髭黒右大将など、玉鬘に想いを寄せている面々はひどく失望して、参内する前に何とかしなければと、それぞれ懇意にしている女房たちに玉鬘への取り次ぎを頼んだ。
しかし、
「吉野の滝を堰かむよりも難きことなれば、いとわりなし」
吉野の滝を堰き止めるよりも難しいことなので
なす術がございません
それそれの女房たちから、つれない返事が返ってきた。
夕霧は秘めていた恋心を玉鬘に打ち明けたばかりなので、
「姫君は今頃、どう思われているだろうか」、
気がかりで仕方がない。
そのことを束の間でも忘れるために、玉鬘が参内するするにあたっての準備に奔走した。
柏木たち実の兄弟は遠慮しているのか、六条院を訪れることはなく、
「姫君(玉鬘)が参内してから、しっかり後見役を務めよう」
それぞれ、その日を待ちかねていた。
New Tale of the Genji (1961)
Raizo Ichikawa
「新源氏物語」 市川雷蔵
森一生監督
映画制作年の古い順に並べると、
長谷川一夫・市川雷蔵・天海祐希・生田斗真。
宝塚の男役をふくめて時の美男を配していますが、
私自身の光源氏像にもっとも近いのは市川雷蔵です。
いまの役者では、だれが一番ふさわしいでしょうね。
宝塚花組版「源氏物語」
阿弥陀ヶ滝 葛飾北斎「諸国瀧廻り」の一つ