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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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▼忍びの恋  しのぶれど 色に出でにけり

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$吉備路残照△古代ロマン-羽田空港 しのぶれど 色に出でにけり

翌朝早く、羽田空港から電話があった。

福岡行きの一番機を待っていた友が体調を崩して、搭乗を取りやめたという。

わたしが空港に着いたとき、医師の手当てを受けたあと待合室の椅子に座っていた。


ある女性に矢も盾もたまらず会いたくなったのだそうだ。

一目見たときから面影が去らず、ずっと自分の胸のうちだけにしまいこんで、相手にも気づかれないままに恋していたのだ。


これを王朝文学でいう忍びの恋と呼ぶのかどうか、わたしには分からない。


ただ、式子内親王の歌をはじめ、忍びの恋を詠んだ歌を鑑賞するときは、いつも友を思い、彼の体験を借用している。

○しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで  平兼盛

恋心をずっと秘めてきたけれど、顔や表情に出てしまっていたようだ。「どなたかを想っていらっしゃるんですか?」と人に尋ねられるほどにーー。


友の恋心はついに色には出なかった。

私も知らなかったし、彼女も気がついていなかったそうだ。


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