和琴(わごん)を弾く若紫(紫の上) 風俗博物館
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物思いに沈んで気の晴らしようがないときは、源氏はいつも西の対の若紫に会いにゆく。
横笛を心地よく吹き鳴らしながら部屋をのぞくと、若紫は露に濡れたナデシコの花のような風情で物に寄りかかっていた。
その様子は愛嬌があって可愛らしいが、源氏が早く帰っていながらすぐに自分のところに来なかっので拗ねているらしい。
源氏が端の方にすわって、「こちらへ、いらっしゃい」と呼んでも素知らぬ顔。
「入りぬる磯の」と恋の歌の一節を口ずさんだと思ったら、すぐに口元を手でかくした。
子供ながら、妙に色っぽい。
○潮満てば 入りぬる磯の 草なれや
見らく少なく 恋ふらくの多き 大伴坂上郎女 『万葉集』
潮が満ちれば沈む磯の草のよう。逢っている時はあっという間に過ぎ去り、恋しく想っている時間はえんえんと長く感じる
*大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ) 大伴家持の叔母で姑
「姫はよくもそんなおませなことを。でも、『みるめに飽く』といって、朝も夜もみるのは、飽きるので良くないといいますよ」
○伊勢の海人の 朝な夕なに かづくてふ
みるめに人を あくよしもがな 『古今和歌集』
伊勢の海人が朝夕にもぐって採るという海松布(みるめ:ミル/見る目)のように、わたしもあの人に心ゆくまで会える方法があればいいのになぁ
源氏は人をよんで琴をもってこさせ、若紫に弾かせようと仕向ける。
弦の調子を整えると、琴を若紫のほうへ押しやった。
若紫はいつまでも拗ねてばかりはいられず、弾きはじめた。
まだ背丈が低いので、身体ごと腕を伸ばして弦をおさえる手つきがたまらなく可愛らしい。
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佐藤浩市は香川照之(歌舞伎役者としては、市川中車)と並んで、映画にドラマにきわめて露出度が高い。
「くる仕事は原則として受ける」という方針なのだろう。香川照之はほとんど2、3番手だが、
この二人と対照的な役者が松平健。俗説かもしれないが、勝新太郎の付き人をしている時にいわれたそうだ。
「おまえは、主役だけをやれ。主役でない場合は、断れ」
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