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藤壺④「待つ」人生

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$吉備路残照△古代ロマン-東山光源氏

 光源氏(東山紀之) TBSドラマ『源氏物語』      

$吉備路残照△古代ロマン-藤原道長

 藤原道長&紫式部(中谷美紀)映画『千年の謎』


内裏(だいり:後宮 ハーレム)に入るほどの女たちは、格式の高い家に生まれた娘たちのうち、容姿と教養にひときわ恵まれた者である。

入内すると、大臣以上の家柄の者は「女御(にょうご)」、大納言以下の場合は「更衣(こうい)と階層化された。

皇后と中宮は、女御の中から選ばれる。

故大納言の娘である桐壺の更衣は名前が示すとおり「更衣」であり、皇女(帝の娘)の藤壺は「女御」、それも最高ランクの「女御」である。


「先帝」の娘である藤壺が15歳で入内したとき、すでに先輩の「女御」や「更衣」たちは帝とともに齢を重ねていた。

当時の年齢感覚では、20代半ばを過ぎたおばさんたちの中にそろそろ適齢期を迎える少女が一人、といったところだろうか。

もちろん、彼女ら相互に付き合いがあるわけではない。

「家」の盛衰をかけた不倶戴天のライバルである。

究極の目的は帝の子を産んで、父親を帝の「外祖父」にすること。

換言すれば、「家」は権力の階段を上るために、自慢の娘を入内させるのだ。

まさに、「性」は「政」である。


桐壺帝は桐壺の更衣が入内して以来、他の「女御」や「更衣」を見向きもしなくなった。

藤壺が、入内してからも同じ。

すべての后を等しく愛さなければならないはずの帝は、自分のなすべき務めを果たしていないのだ。


どうなんだろう。

桐壺の更衣や藤壺と逆ベクトルの連想だが、
入内したものの帝の訪れが1度もなく、あるいは2度となく、せまい部屋で、孤閨をかこったまま空しく年老いていった「女御」や「更衣」が、史実としていたのではないだろうか。

「1度もなく」はないにしても、何らかの理由で「2度となく」はあったのではないだろうか。

いずれにしろ、入内するということは、ひたすら帝の訪れを「待つ」ことに他ならない。

もちろん、実家で暮らしている女たちにしても、恋愛そして結婚するには、男からの恋文(和歌)を「待つ」ほかないわけだ。

男が「和歌」を送る時点では、女についての噂を伝え聞いているだけで、顔も人柄も知らなかったというのは不思議な気がする。

見たこともない相手に、どうして「恋の歌」を作れるのだろうか。


当時は「通い婚」だから、男が女の「家」に通った。

男が通わなくなったら、それで終わり。

ふたりの「愛の巣」を営むということはない。


平成の女性方は、こうした「待つ」人生をどう思われるだろうか。

もっとも、夫が留守のはずの自宅に若い男を持ち帰る、「待てない」女傑が現われる世の中だから、ひたすら「待つ」だけの女の人生はもはや流行らないのかも知れないが……。


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