男は大なり小なりそうであろうが、光源氏(以下、源氏)は典型的なマザコンだ。
あくなき女性遍歴は、もとをたどれば「母恋し」に起因する。
3歳の時に生母・桐壺の更衣(以下、更衣)を亡くした源氏は、母親の顔も声も姿も覚えていない。
ずっと、「母の面影」を追い続けていただろうことは想像に難くない。
稀代のドン・ファンである源氏は、それでも生涯にふたりの女性を心から愛するが、二人とも母親と似ているからなのだ。
初恋の人・藤壺の宮(以下、藤壺)は、源氏がまだ幼いころ、周囲の女房たちに、「藤壺様は、亡き母上に生き写しなのですよ」と度々聞かされているうちに慕い憧れるようになり、いつしか恋心に変わった。
源氏が深く愛したもう一人、鞍馬寺あたりで見かけた幼い紫の上は、藤壺と瓜二つなので心を魅かれ、自分の手で理想の女性に育てるべく奪うように自邸に引き取った。
紫の上が、藤壺の姪であることをあとで知る。
いわば、藤壺は母の「身代わり」であり、紫の上は藤壺の「身代わり」であった。
つまり、源氏が大切に思い愛してやまなかった藤壺と紫の上は、ともに母親の「身代わり」である。
はかなげで清楚な佳人であった更衣は、時の桐壺帝の寵愛を一身に受けた。
昼は帝が更衣のいる淑景舎(しげいしゃ 桐壺)に足を運び、夜は更衣を清涼殿に呼んだ。
淑景舎と清涼殿は200mほど離れているので、行き帰りは他の女御や更衣の殿舎の前を通らなければならない。
当然、夜毎に招かれる更衣は、お声のかからない彼女たちの激しい反感と嫉妬を買う。
愛情問題だけではない。
女御と更衣は、実家の繁栄を背負って入内しているのだ。
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