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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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平家物語の群像 六代と文覚⑤千本松原で

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$吉備路残照△古代ロマン-千本松原の不二 「千本松原の不二」
……葛飾北斎木版画


斎藤五宗貞斎藤六宗光は、六代の輿(こし)の左右に付きそった。

時政は乗り換え用の馬を用意して、ふたりに乗るよう勧めたが、大覚寺から六波羅へ出かけたとき同様やはり乗らなかった。

「最後のお供です。つらくはありません」

京都から鎌倉まで、裸足で歩きはじめた。

こうして、平家一門の嫡子として生れながら栄華の時代をまるで知らない六代は、乳母(めのと)たちとともに、世間から隠れるようにひっそりと暮らしていた都に別れを告げた。

見知らぬ鄙びた東国へ向かう六代の心の内は、察するほどに哀れである。

しかも、鎌倉下向がそのまま「死への行進」なのかも知れないのだ。

恐怖心が去ることはない。

六代は、鎌倉武士が自分の乗っている輿の方へ馬を走らせてくると、「あっ、首を斬りにきた」と怯え、彼らが何か囁きあっていると、「いよいよ、最期か」と心が小刻みに震えた。


京都山科の四宮河原(しのみやがわら)を眺めたかと思うと、いつの間にか逢坂関(おう/あふさかのせき:山城と近江の国境の関所)を通り過ぎて、大津の浦に着いていた。

粟津の松原(近江)にさしかかったころ、辺りを見回すと日が暮れかかっている。

幾つかの国々や宿場を過ぎて駿河に入ると、いよいよ六代の命運は尽きたと思われた。

武士たちが、千本松原(沼津市)で六代の輿を下して、地面に敷皮を広げた。

「若君、お降り下さい」

時政が馬から飛びおりて、急いで六代の近くに駆け寄った。

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               3月12日

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