戦い終えた義経は、平家一門の男女の捕虜を伴って壇ノ浦から京へ向かった。
4月14日、播磨国の明石の浦に到着。
明石の浦は昔から幾多の和歌に詠まれてきた名高い歌枕で、更けゆくにつれて冴えわたる月は、おさおさ秋の空にも劣らなかった。
平家の女房たちは、みんな忍び泣いた。
「先年、明石の浦を通ったときには、このような境遇になるとは夢にも思わなかったのに……」
帥典侍(そちのすけ:平時忠の後妻)は、何かしら切ない思い出があるのか、涙をあふれさせている。
つくづくと月を見上げながら、詠んだ。
○ 眺むれば 濡るる袂に 宿りけり
月よ雲井の 物語せよ
治部卿局 (じぶきょうのつぼね:平知盛の正室)が続ける。
○ 雲の上に 見しに変はらぬ 月影の
澄むにつけても 物ぞ悲しき
大納言典侍(だいなごんのすけ:平重衡の正室)
○ わが身こそ 明石の浦に 旅寝せめ
同じ波にも 宿る月かな
義経はもとより無骨な鎌倉武士だが、「平家の女房方はさぞかし昔のことを懐かしくも恋しくも思っておられるのだろう」としみじみと感じとり、哀れに思っていた。
4月25日、三種の神器のうちのふたつ、八咫鏡と八尺瓊曲玉が鳥羽に到着する。
多くの公卿・殿上人が鳥羽へお迎えに参上した。
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