ユーロ圏
同じ日本人でも、ガイドに引率されたツァー参加者は、ひとりで海外を旅する者に比べておそらく多くの面で無防備だろうし、ひいては円と外国通貨との交換率にも鈍感であろう。
紙幣の価値が肌身で分かる円だったら、いくら人がよく素直な日本人でも、非常識きわまる金額を言われるままに出す気にはならないのではないか。
それにしても、数十万円からの大金を持ち歩いて、一度の食事代にポンと支払っている同胞が三太郎には恨めしかった。
レシートの束の半分ほどに目を通した頃合いを見計らって、店長が、「どうですか」と尋ねてきた。
どうですか、とはどういう意味か。
日本人を甘く見てはいけない。
カモになるのは御免こうむると、三太郎はレシートの束を店長に突き返した。
店長はあきれたという顔をすると、だて男に何か耳打ちをした。
だて男が部屋から出て行った。
ほどなく、後ろのドアが「ギィー」と鈍い音を立てた。
振り返ると、額に2cmほどの傷のある、粗暴そうな大男が身体を折り曲げるようにして入ってくる。
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だて男 ⑫粗暴そうな大男
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