源氏物語
35帖若菜下
源氏:41~47 紫の上33~39 女三宮15~21 夕霧20~26
明石の君:32~38 明石女御:13~19 柏木:25~31
髭黒左大将36~42 玉鬘27~33 冷泉帝23~29
ホタルの乱舞
25帖〈蛍〉
とっぷり日が暮れた時分、
源氏は悪戯心で玉鬘を隔てる御簾をわずかに開け
無数の蛍の群れを一斉に放って玉鬘の息を呑
むような妖艶な姿を暗闇に浮かび上がらせ
恋焦がれる蛍兵部卿宮に見せつけた。
この場面は
「源氏物語」屈指の妖しく幻想的な情景である。
このエピソードによって
兵部卿宮を通称、蛍兵部卿宮と呼ぶ。
蛍兵部卿宮(以下、蛍宮)は若くして北の方と死別したが、彼女の面影を今も忘れられない。
それ以来独り身を通しているが、長兄の朱雀院が女三宮の婿君を探していることを知るとすぐに名乗りを上げた。
だが院は、「蛍宮は風流心が過ぎて少し頼りない」と思っているようで、姫宮を次兄の源氏に託した。
こうして、女三宮は院の強い意向で源氏の正妻に収まったが、同時に紫の上の立場を微妙なものにした。。
その源氏の養女、玉鬘の噂を聞くと蛍宮はさっそく求婚したが、伏兵の髭黒に強引にもっていかれる。
どうも結婚話がうまくいかず世間に笑われているだろうと焦った蛍宮は、次に母親の実家にいる真木柱を貰い受けようと祖父の式部卿宮に相談した。
式部卿宮は、次のような理由であっさり承諾する。
「私たち宮家の者は本当に娘や孫娘を大切に思うのなら第一に〈入内〉を望み、次には親王に嫁がせるのが筋だ。