源氏物語
35帖若菜下
源氏:41~47 紫の上33~39 女三宮15~21 夕霧20~26
明石の君:32~38 明石女御:13~19 柏木:25~31
「女三宮と猫」 鈴木春信画
浮世絵師の鈴木春信の手になるからか
平安時代の皇女というより江戸時代の町娘のよう。
蹴鞠遊びが催されていた時、猫が
御簾を巻き上げたため露わになった女三宮
の立ち姿を目にした柏木はますます心を奪われる。
源氏が朱雀院の娘/女三宮を「正妻」として迎えて以来
紫の上との関係がギクシャクして【六条院】に暗雲が漂う。
☆ ★ ☆ ★
という話になって、髭黒と夕霧の両大将をはじめ上達部たちが利き腕を軽く回しながら射場に下りて行った。
ところが、柏木は射場には下りたものの沈痛な面持ちで一人ぽつねんと物思いに沈んでいる。
柏木の恋患いに気づいている親友の夕霧は案じた。
「どうも、様子がおかしい。
面倒なことが起こらなければ良いが--」
柏木は源氏の前では空恐ろしくて声をかけることはおろか目を上げることすら出来ない。
柏木、
「このような横恋慕をしてよいものだろうか。
何であれ、他人様から後ろ指を指されるようなことは決してすまいと昔から決めていたのに--。
まして、身の程をわきまえない大それた邪恋を」
思い悩んだ末、
「せめて、蹴鞠遊びの日に見かけた唐猫でもいいから手に入れたいものだ。
切ない恋心を猫に打ち明けることはできないが、独り寝の寂しさ慰めるよすがにはなろう」
柏木は、もはや冷静な判断が出来なくなっている。