第二十九帖 行幸
光源氏36 紫の上28 蛍兵部卿宮 玉鬘24 内大臣39
秋好中宮27 夕霧15 明石の君:27 柏木20
明石の姫君8 髭黒右大将31 花散里22
雲井の雁 弁少将 近江の君
冷泉帝18
近江の君
侍女と双六に興じている。
ひどく醜いうえに融通の利かない末摘花すえつむはな
男を見ると色目を使う好色な老女源典侍げんのないしのすけ
早口で無教養・無神経な近江の君の3人を「三大滑稽」という。
今の感覚からすると他人事ながら不愉快だが、
『源氏物語』に添えられた「物笑い「」の対象。
世間はとかく口さがないもので、しばらく世間に伏せておこうと思っていた玉鬘の噂がじわりと広がっていった。
ほどなく、同じく内大臣の*外腹の娘である近江の君の耳にも届いた。
その近江の君が、一大事とばかりに弘徽殿女御の部屋に駆け込むと、柏木中将と弁少将が控えている。
「父上(内大臣)は、玉鬘という方をお迎えになるのですか。
まあ、およろしいいこと。
その方は、源氏の君と父上のお二人に大切にされているとか。
わたし同様、賤しいお生まれとお聞きしましたのに--」
無遠慮なことを早口で話すので、女御はハラハラしていた。
*外腹ほかはら 正妻以外の女性の子供。
柏木、
「玉鬘の君には何か大切にされる理由がおありなのでしょう。
それにしても、だれに聞いたのですか。
口うるさい女房たちの耳に入ったら面倒なことになります」
近江の君、
「おだまりなさい。
わたしは何もかも聞いておりますの。
その方は、*尚侍におなりになるのでしょう。
わたしは、尚侍のような役につきたくてわざわざ近江からて出て参りましたのよ。
だから、尚侍に推薦していただきたくて身分の低い女房たちですら避げようとする便所掃除なども進んで致してきました」
*尚侍ないしのかみ
内侍司ないしのつかさの長官。
帝の近くに仕えて勅旨の伝達などをしていたが、のちに女御・更衣に
準じて「後宮」に列するようになった。
近江の君が予想もしていなかった望みを持っていることを知って、3人とも大笑いしたが、一瞬後、苦笑いに変わった。
熱中症に御用心!